胸部、背部せきが長引く
長引く咳には理由がある
風邪を引いた後、熱やのどの痛みはなおったのに、咳が長引く場合があります。あるいは毎年季節の変わり目に、乾いた咳が長引くことを繰り返している方もいらっしゃいます。聴診器を当てても肺や気管支に雑音は聞こえず、X線写真を撮影しても肺に異常な影がみあたらない。ただ咳だけが続く。このような患者さんは日常の外来診療の場ではかなりの数に上ります。その原因は、細菌感染のほかに咳喘息、アトピー咳嗽、後鼻漏咳嗽、逆流性食道炎などが考えられます。
マイコプラズマと百日咳
マイコプラズマ菌と百日咳菌は、通常の風邪のようなせき、鼻汁と発熱から始まり、その後、乾いた咳が数週間以上にわたって続きます。マイコプラズマ感染についてはのどをぬぐって10分程度で判定できる迅速検査がありますが、その感度はあまり高くありません。百日咳の場合もそうですが、2週間の間隔をおいた2回の血液検査によって抗体の変動を調べることで初めて確定できます。しかも症状が起こってから2週間以上たっていると、気管支さらには肺にかけての粘膜が傷ついてしまっているので、菌を退治しても咳が長引いてしまいます。このため疑いがあれば早期に抗生剤を投与することで症状の軽減を図るとともに、周囲への感染の危険性を少なくすることが推奨されています。マイコプラズマと百日咳は一部の抗生剤しか効き目がありません。
喘息ではないけれども喘息のような咳喘息
咳喘息(せきぜんそく):夜間、明け方に咳が悪化し、息苦しい感じがします。また屋外の冷たい空気を吸ったり、しゃべっているとだんだん咳が出てきます。これは空気の温度変化に対して気管支が収縮して狭くなってしまう気道過敏性を反映した症状です。咳喘息を放置した場合、3割の方が本当の喘息(成人型喘息)に移行するとのデータがあります。咳喘息の治療は気管支喘息の方と同じように気管支拡張薬やステロイドの吸入薬を使用します。
アレルギーも咳の原因にもなる
アトピー咳嗽:アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を持っている方が、のどの奥がイガイガした感覚とともに咳をし始めるとなかなか止まらなくなった場合はアトピー咳嗽の可能性があります。のどの慢性的な炎症がきっかけになって咳反射中枢を刺激するようになってしまい、とくにほこりや花粉、あるいは黄砂やPM2.5などが原因で咳が誘発されます。冬季に職場で特に咳がよく出る。そういえばオフィスのエアコンが稼働し始めたころだったなどという場合が多いです。内服の抗ヒスタミン薬とともにステロイドの吸入薬を使用します。
鼻水は後ろにも垂れる
後鼻漏咳嗽(こうびろうがいそう):就寝時、横になってしばらくすると出現してくる咳を特徴とします。鼻水が喉の奥をつたって気管に流れ込んで咳が出るものです。起床時、粘り気を持った鼻水が喉の奥にへばりついている、あるいはねばっこい痰が出てくるなどの症状があります。就寝中の鼻汁を止めるための内服の抗ヒスタミン薬と点鼻薬を使用します。
胃酸が原因で咳が出る
逆流性食道炎:咳だから喉や気管支などの呼吸器系に問題があると考えがちです。ところが胃や食道が原因になっている咳もあります。逆流性食道炎とは食後や就寝時に胃酸が食道に逆流し、のどの粘膜や気管を刺激することで咳がでてきます。咳と同時に胸やけや口の中に苦みを感じることが多いですが、咳だけの場合もあります。プロトンポンプ阻害薬と呼ばれるタイプの胃酸を抑える薬を使用します。
咳の原因:現実は単純ではない
実際には上記の複数がかかわっていることがしばしばです。咳喘息に後鼻漏咳嗽が合併し、ひどい咳が続いているうちに咳に伴う腹圧の上昇で胃酸が逆流し、逆流性食道炎による咳が加わることによって直りが悪くなることがあります。咳喘息として吸入薬を処方されているのにあまり効かない、などといった場合にはこのようにほかの要素が加わった可能性を考えたほうがよいかもしれません。問診と診察でどのような状態なのかを把握したうえで、治療を進めてゆきます。また以上の病型は聴診したうえで雑音が聞こえない、また熱も出ていない場合です。咳以外にも症状がある場合には、細菌性肺炎や間質性肺炎、肺癌、肺結核、非結核性肺抗酸菌症、心不全などの可能性を考える必要があります。
喫煙者の長引く咳は要注意
40歳以上でタバコを吸っている、あるいは吸っていた方で、風邪でもないのにしつこいせき、痰が続く場合には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の可能性があります。階段を上ったり、小走りした後に息切れするようになります。肺は0.1㎜ほどの大きさの肺胞と呼ばれる袋状の構造が集まって、気管支で束ねられるような形になっています。たばこの煙などの有害な空気を長年吸っていると、肺に炎症がおこり肺胞の壁が壊されてしまうのです。そうすると息を素早く吐き出せなくなると同時に、酸素を十分体に取り込めなくなるために息切れが出現します。進行すると着替えや入浴などでも息苦しくなり、日常生活に支障が出てきます。
- 診療科目
- 内科・皮膚科・アレルギー科
- 住所
- 東京都渋谷区代々木
1-38-1 タムラビル2階 - 最寄駅
- 代々木駅徒歩1分
- 電話番号
- 03-3377-1011
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10:30 ー 14:00 | △ | ||||||
15:30 ー 18:30 | △ |