成人病高血圧
血圧がどれぐらい高いとまずいのか?
健康診断で高血圧を指摘されることがありますよね。「すぐに病院に行きなさい」と言われるとあわてて行きますが、「ちょっと高めですねえ」程度の言われ方だとまあ大丈夫か、と放っておくことが多いのではないでしょうか。あるいはジムなどで血圧を測ってみたらすこし高いようだけど、まあ運動したあとだからこんなもんか、と思ってそのまま忘れてしまう、なんてことはないでしょうか。そもそも血圧がいくつになったら治療が必要なのでしょうか。
高血圧の診断基準
上の血圧(収縮期血圧)140以上、下の血圧(拡張期血圧)90以上、が高血圧と一般に定義されています。それ以下は正常ということになります。でもガイドラインではこの正常血圧をさらに細かく分けています。
正常高値血圧 | 収縮期血圧130-139、拡張期血圧85-89 |
---|---|
正常血圧 | 収縮期血圧120-129、拡張期血圧80-84 |
至適血圧 | 収縮期血圧<120、拡張期血圧<80 |
正常高値血圧は高血圧の予備軍として注意がうながされているのです。そしてベストの血圧は上が120以下、下が80以下ということになっています。
家で血圧を測りましょう
ひと月に一回だけ病院に行って血圧を測るだけでは、毎日の血圧の変動はよくわかりません。病院で測る日中の血圧は正常だけれども、早朝には高くなっていることがあります。この早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞になりやすい危険なサインの一つです。逆に、病院で測ると緊張して高くなってしまうけれども、自宅で測ると正常という場合もあります。これは白衣高血圧という現象で、あまり心配する必要はないとされています。このため、可能な限り毎日、家庭で血圧を測るようにとされています。朝の起床後1時間以内で排尿後、朝食や服薬の前に、1-2分座って安静にしてから血圧を測定してください。
家庭血圧の高血圧診断基準
上の血圧(収縮期血圧)135以上、下の血圧(拡張期血圧)80以上
となっています。家庭血圧は、診察室での血圧よりも基準が厳しいのです。
高血圧はどうして怖いのか
血圧が高いと頭が重い、肩や首すじがこる、めまいがするなどの症状が起こることがあります。でも高血圧が怖いのはこのような自覚症状が出ることではなく、知らないうちに動脈硬化が進んでしまうことです。放っておくと脳や心臓の血管が詰まったり、破れたりしやすくなります。脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)と虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)を起こす可能性は、至適血圧(上が120以下、下が80以下)の人を1とした場合、以下のようになっています。
数値 | 脳卒中 | 虚血性心疾患 | |
---|---|---|---|
正常高値血圧 | 130-139/ 85-89 | 1.4倍 | 1.4倍 |
I度高血圧 | 40-159/ 90-99 | 2.0倍 | 1.8倍 |
II度高血圧 | 160-179/ 100-109 | 2.9倍 | 2.5倍 |
血圧が140以下と正常範囲内であっても、高めであれば脳卒中や虚血性心疾患のリスクが高いのです。さらに血圧が高ければ高いほど、リスクもさらに高くなるのです。ですから脳や心臓に障害が起こってしまう前に、高血圧の治療を開始する必要があるのです。
血圧の目標値は?
まず血圧を正常範囲にすることが目標ですが、年齢やほかの病気があるかどうかによってその目標値は異なってきます。診察室での血圧の目標値は
75歳以下 | 140/ 90 未満 目標 |
---|---|
75歳以上 | 140/ 90 未満 目標 |
糖尿病 | 130/ 80 未満 目標 |
慢性腎臓病(蛋白尿) | 130/ 80 未満 目標 |
脳血管障害、冠動脈疾患 | 140/ 90 未満 目標 |
となっています。家庭血圧の目標値はこれよりも5ずつ低いです。高血圧状態が続くと、腎臓の働きが悪くなってきて尿中に蛋白がでてきます。尿検査で1日の尿蛋白量が0.5グラム以上であれば要注意の状態です。これ以上腎機能を悪化させないように降圧目標が強化されます。糖尿病を合併している場合も同様です。
生活習慣を見直しましょう
高血圧だといわれたら、まず塩分を制限しましょう。目標は一日の食塩摂取量6g以下とされています。日本人の食生活では結構厳しい目標です。加工食品の成分表示ではNa(ナトリウム)で表示されています。通常はmg(ミリグラム)単位で表示されています。このNaの数値を400で割った値が、グラム単位の塩分量に相当します。身近な食品で一度ご覧になってみてください。カップラーメンやお茶漬け海苔一袋でこんなに塩分があったのかと驚くことでしょう。
一日の食事全体でどれだけの塩分を摂取したのかを知ることはなかなか難しいですが、採血と尿検査で1日当たりの塩分摂取量のおおよその数値を知ることもできます。折にふれて調べてゆきましょう。塩分制限だけでなく、野菜、果物を積極的に摂取しましょう。また減量も必要です。3、4㎏程度の減量でも血圧が下がることがわかっています。あとは毎日30分以上の有酸素運動(早歩きで可)をしましょう。体重が増えたという人は、もとの体重に戻すだけでも血圧を下げる効果があります。
血圧の薬は一生続けなければいけないの?
日常生活を改善しても血圧がなかなか下がらない場合、あるいは血圧がかなり高めな場合は、血圧を下げる薬(降圧薬)を開始します。数か月かけて血圧をゆっくり下げてゆきます。塩分の排泄を促進する薬、血管を広げる薬、交感神経の緊張をゆるめる薬、利尿剤など、降圧薬は何種類もあります。年齢や体形、腎臓の働き、心疾患や脳血管障害、糖尿病の合併の有無を考慮しつつ、適切なものを選択、組み合わせながら血圧を管理します。
血圧の薬は一度飲み始めたら一生飲み続けなければならない、という間違ったうわさがあります。食生活を見直し、運動の習慣をつけることで体重管理がうまくゆき、降圧薬をやめても血圧が正常範囲に保たれている場合もしばしばあります。また冬の寒い日の朝は血圧が高めになるために薬を飲むけれども、夏になると不要となる場合もあります。薬を飲むようになったら、もうおしまいのような気がするという方もいらっしゃいます。そんなことはありません。食事運動療法がどれだけ期待できるか考えながら治療方針を立ててゆきましょう。
高血圧の原因となる病気が実はあるかもしれない
通常は高血圧の原因となる病気がみつからない場合が多く、本態性高血圧とよばれています。これに対して高血圧の原因となる病気がある場合を二次性高血圧といいます。実際のところ高血圧患者さんの約1割が二次性高血圧であるといわれています。特に40歳以下の方の高血圧、あるいは薬剤に対する反応性の悪い高血圧の場合は、二次性高血圧の可能性を考えさせます。その原因は腎動脈が狭くなっている腎血管性高血圧、副腎から賛成されるアルドステロンが多量に分泌されて高血圧になる原発性アルドステロン症、夜間に気道がふさがって、いびきをかいたり呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群、漢方薬の一部や経口避妊薬(ピル)、解熱鎮痛剤の常用にともなう薬剤性高血圧があります。また更年期の女性で高血圧になることもあります。血圧が高いから薬を飲む、というだけでなく必要に応じて検査を提案させていただきます。大事なのは血圧の数値ではなく、皆さんの健康なのですから。
- 診療科目
- 内科・皮膚科・アレルギー科
- 住所
- 東京都渋谷区代々木
1-38-1 タムラビル2階 - 最寄駅
- 代々木駅徒歩1分
- 電話番号
- 03-3377-1011
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10:30 ー 14:00 | △ | ||||||
15:30 ー 18:30 | △ |